手術・治療のご案内

変形性膝関節症に対する治療

人間の足は体重の軸が通るライン(アライメント)が、膝のほぼ中心を通っています。これにより、体重を関節全体の『面』で支えることができます。しかし変形性膝関節症の患者さんは、アライメントが膝の内側(いわゆるO脚)、または外側(いわゆるX脚)に傾いています。内側または外側の関節部分に体重がかり、全体重を局所の『点』で支えている状態になってしまいます。膝の局所に体重がかかるため、その部位の関節軟骨の損傷が加速している場合が多く、さらに膝の変形を助長している状態です。

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変形性膝関節症の重症度はレントゲン画像から判断します。軟骨のすり減りや骨棘の程度で重症度を分類します。一般的にgrade2および3に対しては膝周囲骨切り術を、関節の骨のすり減りが大きく不安定(靭帯などの緩みがある)なタイプのgrade 4 および5 対しては人工膝関節置換術を行います。ただし、当院では手術の適応は患者さんのご要望も考慮しながら決めております。

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膝周囲骨切り術とは

下肢のアライメント異常を、骨を切って矯正する手術が膝周囲骨切り術です。下肢の変形の中心が大腿骨にあれば大腿骨遠位骨切り術、脛骨にあれば脛骨高位骨切り術を行い、骨切りを行った後ロッキングプレートで固定します。
手術は内視鏡カメラ(関節鏡)を使って膝関節の中の処置も可能な限り行います。余分な骨を削ったり、損傷した半月板を切除したりします。半月板の修復が可能である症例や大腿骨骨壊死などの所見があれば、半月板修復術や骨軟骨柱移植などを同時に行うこともあります。
人工関節との違いは自分の膝関節が温存できるため、手術後、特に生活上の制限はなく、スポーツや重労働など含めた職場にも復帰することが可能です。

手術の方法

脛骨高位骨切り術 -High Tibial Osteotomy-

脛骨(すねの骨)の内側に7-10cmの傷を作って、脛骨に内側から切り込みを入れて目標の矯正する角度を開き、術中に採取した骨やβ-TCPという人工骨を挿入します。β-TCP人工骨は、吸収されて3-5年で自分の骨に置き換わります。
最後に、骨との親和性がよいチタン合金のプレートとボルトで固定します。チタンはMRI検査の際にも問題がない素材です。高齢者に多い骨粗しょう症の方でも問題ありません。チタンプレートとボルトは手術後1年で体内から取り出しますが、ボルトで開いた穴は自然と埋まります(抜去の手術の時に、再度膝の関節鏡評価して追加して処置することもあります)。
手術の所要時間は関節鏡を含めて約2~3時間程度となります。骨を切っているので、歩いたり体重がかかったりすると数か月間は痛みますが、ギブス固定などは不要で、翌日から膝を曲げることができ、約3~6カ月で骨がくっついて完全に痛みが引くと、そこからは普通の生活に戻れます。入院期間も以前より短縮されて、現在は術後14日間となっています。手術後半年程度経過して、骨癒合がしっかり確認できれば、徐々にスポーツ復帰を許可しています。サッカーやラグビーなど負荷の高い運動の復帰も制限はありません。本術式は日本人の健康寿命の延長と生活スタイルの変化に伴い、現在非常に注目されている治療法であり、今後、膝関節分野で飛躍的な発展が期待される軟骨や半月板などの再生医療との併用も期待されています。

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大腿骨遠位骨切り術 -Distal Femoral Osteotomy-

大腿骨を遠位の内側または外側を10㎝程度皮膚切開します。変形部分を骨切りし、骨を矯正します。骨を切って開く場合をOPEN型の骨切り・骨を楔形に切って、くりぬいて切除する骨切りをCLOSE型骨切りと言います。症例に応じてそれを使い分けます。その後片方かまたは外側内側両方にプレートを固定します。脛骨の時の同様に、膝の関節の中は関節鏡手術を行い、必要あればすべて処置します。術後1年でプレート抜去を行います。

膝周囲骨切り術の入院から退院後までの流れ

以下は標準的なスケジュールです。実際のスケジュールは手術が確定しましたら、スタッフよりご説明します。

  • 手術前日
    入院 1日目
    夕食まで食事ができます。
  • 手術当日
    入院 2日目
    《 手術前 》
    • 飲食はできません。注射・点滴などの事前準備を行い、ストレッチャーで手術室へ移動します。
    《 手術後 》
    • 手術後お腹の動きが確認出来たら飲水できます。可能であれば夕食から再開となります。
  • 術後 1日
    入院 3日目
    朝食より食事ができます。状況により松葉杖での歩行開始となります。リハビリ室で平行棒内で立つ訓練をします。
  • 術後 1週
    入院 7~9日目
    状態にあわせて杖歩行を開始します。
  • 術後 2週
    入院 10~14日目
    退院
  • 術後 2~3週
    全荷重歩行訓練を開始。
  • 術後 6ヶ月
    スポーツや重労働に復帰できます。
  • 術後 1年~
    チタンプレート、ボルトの抜去

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診察受付時間/08:30~11:00、13:00~16:00
休診日/日曜・祝祭日・土曜午後

当院は以下の認定病院です。
整形外科専門医研修認定施設、脊椎脊髄外科専門医基幹研修施設。

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