椎間板ヘルニアは、背骨の椎体と椎体の間の椎間板の中にある髄核の一部が飛び出して神経を圧迫することにより、手足の痛み、しびれなどの症状が発生する病気です。椎間板は背骨の骨と骨の間にあるクッションのようなもので、椎間板のおかけで背骨がしなやかにうごくことができます。背骨の後ろには脊柱管という骨に囲まれた空間があり、この中には脳と手足を繋ぐ神経が通っています。
下図をご覧ください。左が正常な状態、右がヘルニアの状態です。ヘルニアの状態では、椎間板の中にある髄核の一部が飛び出して、神経を圧迫していることがわかります。
当グループで実施している椎間板ヘルニアの手術は大きく分けて3つあります。内視鏡を利用し、ヘルニアを摘出することで神経の圧迫を取り除くMED、FED。椎間板内にレーザーを照射し、椎間板の一部分を蒸発させ椎間板内を縮ませることでヘルニアを縮小させ神経の圧迫を弱めるPLDD。椎間板内に酵素を含んだ薬剤を注入することで椎間板の組成が変化しヘルニアが縮小することで神経の圧迫を弱める椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)があります。いずれも、からだに負担の少ない低侵襲な治療方法です。
手術の種類 |
術式 |
入院日数 |
傷の大きさ |
麻酔 |
保険 適用 |
内視鏡下手術 |
MED |
4~6日 (術後2~4日) |
18~20mm |
全身 |
可 |
内視鏡下手術 |
FED |
3~4日 (術後1~2日) |
8~10mm |
全身 |
可 |
レーザー治療 |
PLDD |
半日~1日、1~2日 |
針穴 |
局所 |
不可 |
注射 |
椎間板内酵素注入療法 (ヘルニコア) |
半日~1日、1~2日 |
針穴 |
局所 |
可 |
上記の内容はあくまでも目安になります、予めご了承ください。
MEDとは
MEDはMicro Endoscopic Discectomyの略で、日本語では「内視鏡下椎間板摘出術」と言い、内視鏡下で椎間板ヘルニアを摘出する手術です。当院では最もスタンダードな術式で、手術実績が多く、メリットも多い手術方法です。
MEDの特徴
- 傷跡が小さい(18~20mm)
- 背中の筋肉の損傷が少ない
- 術後の痛みが軽い
- 細菌感染の可能性が少ない
- 回復が早く、日常生活や仕事への復帰が早い(入院日数:4~6日、術後2~4日)
- ほぼ全てのヘルニアに対応可能
FED(FESS)とは
FEDはFull-Endscopic Discectomyの略で、日本語では「完全内視鏡下脊椎手術」と言い、内視鏡下で椎間板ヘルニアを摘出する手術です。これまで「PED(Percutaneous Endoscopic Discectomy)」と呼ばれていた手術です。
FED(FESS)の特徴
- 傷跡が小さい(8~10mm)
- 背中の筋肉の損傷が少ない
- 術後の痛みが軽い
- 細菌感染の可能性が少ない
- 回復が早く、日常生活や仕事への復帰が早い(入院日数:3~4日、術後1~2日)
- 当院のFEDは、健康保険適用
注意
- すべてのタイプのヘルニアにFEDが適応できるわけではありません
PLDDとは
PLDDはPercutaneous Laser Disc Decompressionの略で、日本語では、「経皮的レーザー椎間板減圧術」と言い、椎間板内にレーザーを照射し一部分を蒸発させ縮ませることで神経の圧迫を弱める手術です。
PLDDの特徴
- 傷口は注射痕のみ
- 入院期間は1日と短期間
- 細菌感染の可能性が少ない
- 傷の痛みがなく、日常生活や仕事への復帰が早い(入院日数:半日~1日、1~2日)
椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)とは
椎間板内酵素注入療法は、椎間板内に酵素を含んだ薬剤(ヘルニコア)を注入することで椎間板の組成が変化しヘルニアが消失することで神経の圧迫を弱める方法です。髄核には保水成分が豊富にあるため、ヘルニコアを髄核に注射することで、有効成分のコンドリアーゼが髄核内の保水成分を分解し水分によるふくらみを和らげます。結果として神経への圧迫が改善し、痛みや痺れなどの症状が軽減すると考えられています。手術と異なり、傷口は注射痕のみで、入院期間も半日~1日(場合によっては1~2日)と短く済みます。
椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)の特徴
- 注射一本で治療が可能
- 傷口は注射痕のみ
- 入院期間は1日と短期間
- 細菌感染の可能性が少ない
- 傷の痛みがなく、日常生活や仕事への復帰が早い(入院日数:半日~1日、1~2日)
注意
- 投与によるアナフィラキシー(かゆみ、蕁麻疹などの皮膚症状、腹痛、吐き気などの消化器症状、視野が狭くなるなどの視覚症状)の可能性があります。アレルギー体質の方はヘルニコアの治療に注意が必要です。
- 過去に椎間板内酵素注入療法を受けたことのある方は、再度この治療法を受けることができません。
- ヘルニアの形や出ている位置によっては、椎間板内酵素注入療法の適応とならないことがあります。
ブロック療法とは
各々の神経痛、関節痛に対して局所麻酔剤およびステロイド剤を目的の神経や関節に直接、またはその近くに注入します。一時的に患部そのものの痛みを軽減させるだけではなく、痛みによる反射的な血管の収縮や筋肉の緊張を抑えて2次的な痛みも取り除きます。この効果は、麻酔剤の効果が切れた後も続きます。また、その効果を判定することで診断に重要な役割を果たします。
高周波熱凝固(RF)とは
高周波熱凝固(RF)とは、一般的な局所麻酔薬やステロイド剤を使用した神経ブロックとは異なり、高周波を利用して熱凝固を行う神経ブロックです。当院では、ニューロサーモJK3を使用して高周波熱凝固(RF)による神経破壊を行っております。神経を破壊するというと少々怖いイメージがあるかと思いますが、実際は米粒程度しか熱凝固しません。しかも、痛みの原因となっている知覚神経のみを電気刺激により探す事ができるため、とても安全な手技となっております。また、熱凝固した神経は数か月で再生します。完全に神経を殺すわけではないというのもこの手技のいいところです。医療業界では電気メス、一般家庭ではIHクッキングヒーター、電子レン ジ等が同じような原理を利用しています。