首の痛み(頚部痛)
この記事は 湯澤洋平 医師 が書いています。
湯澤 洋平(ゆざわ ようへい)
稲波脊椎・関節病院 副院長
学会認定・資格:日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医、日本整形外科学会認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医
ウェブサイト「稲波脊椎・関節病院」首の痛み(頚部痛)
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首、肩、肩甲骨あたりの痛みの患者さんはかなりいますが、強い腰痛と異なり日常生活に重度の支障をきたすほどの症状の方は少ないようです。
首、肩、肩甲骨あたりの痛みのみでなく上腕、前腕、手指までひびく痛みやしびれがある場合は前項の“手や腕のしびれ、痛み”の項目の方針で進めます。純粋に首、肩、肩甲骨あたりの痛みのみである症状についてここでは説明していきます。
頚椎の構造
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頚椎の外観は図4の通りです。基本的には腰椎と同じ構造です。頚椎の前の方に椎間板があり、後の方に椎間関節があります。椎間関節は右と左にあります。
首、肩、肩甲骨あたりの痛みのみでなく上腕、前腕、手指までひびく痛みやしびれがある場合は前項の“手や腕のしびれ、痛み”の項目の方針で進めます。純粋に首、肩、肩甲骨あたりの痛みのみである症状についてここでは説明していきます。
痛みの原因部位
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ひとつは頚椎の変性(加齢変化)、もうひとつは筋肉や筋膜などの軟部組織の硬さが原因として考えられます。両者を合併していることも多いようです。
頚椎の変性が原因の場合の診断と治療方針
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頭頚部を後屈させる、さらに左右どちらかに傾けた場合に右か左の片方に強い痛みが出る場合は頚椎の椎間関節が痛みの原因になっていると考えられます。逆に前屈で痛みが強い場合は椎間板が痛みの原因になっている可能性がありますが、前屈で頚部の後方の筋群が引っ張られるため筋・筋膜が痛みの原因の可能性もあります。
急性に痛みが出た場合は急性炎症がある可能性があり、消炎鎮痛剤の内服や貼付がよいと考えられます。”腰痛“の項でも述べましたが、痛みがあっても少しずつ動いていった方が結果的には社会復帰が早いようです。むやみに安静にすることはかえって痛みが長引く可能性があります。急性の炎症なので比較的すみやかに痛みがひいていく可能性が高いと思われます。第2頚椎(軸椎と呼ばれる)の歯突起と呼ばれる部分の周囲に偽痛風(痛風は尿酸なのに対して偽痛風はピロリン酸)の発作を起こすことがあります。これは急にとてつもない頚部痛が出現します。病院の受診を勧めますが、激痛なのでここでアドバイスをするまでもなく即座に病院へ行かざるを得ないほどの痛みとなります。治療は消炎鎮痛剤の内服などで炎症が静まるのを待つ方針となります。
慢性痛の場合は消炎鎮痛剤で炎症をおさえるという単純な方法では対応が難しい場合が多いです。変性した頚椎を元に戻すことはできないので、慢性痛の場合は痛みと上手に付き合っていく必要があります。基本的には保存療法で内服薬や貼付剤(貼り薬)の使用、ブロック、物理療法(温熱療法、牽引、低周波治療など)、理学療法(マッサージ、ストレッチなど)があります。東洋医学的なマッサージ、整体、鍼灸などに効果がある場合もあります。変性した椎間関節や椎間板は動きが悪くなると(可動性が少ない)痛みを出しやすいようです。頚部や肩甲骨に対するゆっくりとしたストレッチをすることで頚椎の可動性を高めていくと慢性の頚部痛は軽減する可能性があります。
慢性痛があり上記の対応でも痛みが軽減しない、日常生活にも支障があるほどの痛みが長く続いている場合は手術を考慮する場合もあります。しかし、慢性腰痛の項でも述べましたが安易に手術治療をするものではありません。かといって手術でない治療を続けているにもかかわらず日常生活が困難なほどの痛みがある場合は手術治療に踏み切った方がよいかもしれません。具体的にどのような場合に手術が必要かは繊細な判断が必要ですので担当医とよく相談して決める、あるいはセカンドオピニオンを求めるのもよいかもしれません。
“腰痛”の項でも述べましたが、必ずしも頚椎やその周辺の筋肉などが原因とは限らない場合もありますので、1度医師の診察を受けて頚椎が原因であるかどうかの判断を受けることが必要です。
筋肉や筋膜などの軟部組織の硬さが原因の場合の診断と治療方針
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筋・筋膜に原因がある場合は筋肉の硬さやしこり、圧痛(押すと痛い)などの現象があります。中高年の方は上記の頚椎の変性と合併していることも多いと思われます。若年者では純粋に筋・筋膜が原因であるかもしれません。
急に痛みが出た場合は急性炎症である可能性があり、消炎鎮痛剤の内服や貼付がよいと考えられます。この場合もやはり痛みがあっても少しずつ動いていった方が結果的には社会復帰が早いようです。むやみに安静にすることはかえって痛みが長引く可能性があります。急性の炎症なので比較的すみやかに痛みがひいていく可能性が高いと思われます。高度の痛みがある場合は筋・筋膜の外傷性の問題がある可能性があり、医師と相談することをおすすめします。
慢性痛の場合は前記の頚椎の変性による慢性痛と同様の対処方法です。基本的には保存療法で内服薬や貼付剤(貼り薬)の使用、ブロック、物理療法(温熱療法、牽引、低周波治療など)、理学療法(マッサージ、ストレッチなど)があります。東洋医学的なマッサージ、整体、鍼灸などに効果がある場合もあります。頚部や肩甲骨に対するゆっくりとしたストレッチをすることで頚椎の可動性を高めていくと慢性の頚部痛は軽減する可能性があります。筋・筋膜に原因がある場合は手術治療が必要になることはありません。言い方を替えると、筋・筋膜に原因がある場合は手術という方法では痛みの改善は得られません。
頚部痛に頭痛を伴う場合
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頚椎の変性が痛みの原因である場合、頭痛を伴っていることがあります。その頭痛は頚椎原性頭痛と呼ばれています。どのようなメカニズムで頭痛が出るのか諸説ありますが、まだ明確ではありません。多数のメカニズムである可能性もあります。頚椎に原因がありながら、頭痛症状の方が強いという方もいます。通常の頭痛治療での効果が少なく、頚部痛を伴った頭痛症状がある方は頚椎の専門家を受診するのもよいかもしれません。
- これらの症状は脊椎に原因がある可能性がありますが、脊椎以外に原因がある場合もあります。これらの症状の原因のすべてを網羅してここで説明することは難しいので、脊椎に原因がある場合を中心にこれらの症状について順に説明をしていきます。
各ページでは腰椎椎間板ヘルニア、腰椎すべり症、腰部脊柱管狭窄症などの画像検査の結果、すなわち形態的な特徴から診断を始めるのではなく、患者さんが困っている症状(痛みや神経機能の障害)に基づいて判断して診断し、治療方針を決めていく流れを説明しております。医療関係者でない方も理解出来るようなるべく平易な説明に心がけましたが表現の正確性を考慮して必要最小限の解剖用語を使用しました。患者さんやこれから脊椎疾患を学ぶ医療関係者の参考に少しでもなればよいと思います。